都市伝説 調査隊(file:18)
ギガス写本(Codex Gigas)は、13世紀初め悪魔が書かせた!? 世界最大の謎の書物「ギガス写本」
「悪魔の聖書」とも呼ばれる、中世最大の写本をご存じだろうか?
その名はギガス写本(Codex Gigas)。舞台は13世紀、現在のチェコにあたるボヘミア地方。ベネディクト会の修道院で生まれたとされるこの写本、ただの古文書と思ったら大間違い。なにせ、この本には悪魔が描かれ、しかも一晩で完成したという、とんでもない伝説があるのだ!
世界最大級の「書物」
まずは、そのスケールに驚かされる。
- 高さ:約92cm
- 幅:50cm
- 厚さ:最大25cm
- 重さ:約75kg!
まるで冷蔵庫を寝かせたようなサイズ感。ページ数は624ページにものぼり、その製作にはなんと160頭分の動物の皮が使われたというのだから驚きだ。こんなものを机に置いたら、机のほうが壊れてしまいそうである。
中身はラテン語で書かれており、内容は盛りだくさん。聖書(旧約・新約)はもちろん、医学書、魔術的な記述、カレンダー、名簿、さらにはチェコの年代記まで含まれている。いわば、13世紀版の「百科事典」と言えるだろう。
「悪魔の聖書」と呼ばれる理由
ギガス写本が“悪魔の聖書”と恐れられる最大の理由——それは悪魔のイラストだ。

270〜290ページのあたりに、人間の背丈ほどある悪魔の絵が1ページまるごと使って描かれている。角を持ち、爪を広げ、こちらを睨みつけるその姿は、まさに“恐怖”そのもの。
そして伝説はここから始まる。
ある修道士が重大な罪を犯し、修道院から厳しい罰を受けることとなった。そこで彼は、命乞いの代わりに「一晩でこの壮大な写本を完成させる」と宣言。だが当然、そんなことは人間にできるはずもない。
絶望した修道士は、悪魔・ルシファーを召喚し、自らの魂と引き換えにその助力を得た——そして、夜明けと共にこの巨大なギガス写本が完成していたというのだ。
この伝説こそが、ギガス写本を“悪魔の聖書”たらしめているのである。
科学の眼が見たギガス
もちろん、現代の科学者はこの「一晩で完成」説を信じていない。筆跡鑑定の結果、写本はすべて同一人物によって書かれていることがわかっている。しかも、文字の整い具合や装飾の精密さから、最低でも20年はかかったと推定されている。
つまり、悪魔ではなく、ただひたすら書き続けた人間の執念の賜物というわけだ。だが、そうとわかっていても、悪魔のイラストや伝説を知ると、どうしても神秘的なオーラが漂うのがこの写本の不思議なところ。
現在のギガス写本はどこに?
その後、ギガス写本は様々な歴史の荒波にさらされながらも現存している。ベネディクト会修道院から他の場所に移され、最終的には三十年戦争の戦利品としてスウェーデンに運ばれた。
現在はストックホルムのスウェーデン国立図書館に所蔵されているが、一般公開はされていない。その神秘性は、いまだ失われていないのだ。
「悪魔の書」はなぜ人を惹きつけるのか?
ギガス写本の魅力は、単なる古文書や歴史資料という枠を超えている。あのサイズ感、内容の多様さ、そして悪魔の伝説。どこをとっても人々の想像力を刺激する「都市伝説の宝庫」だ。
現代でも研究者たちはこの写本を巡って新たな発見を追い求めている。
ギガス写本とは、時間と謎を閉じ込めた“中世のブラックボックス”なのかもしれない。
読み終えたあなたも、少し背筋がゾクッとしたのでは?
都市伝説は、時に史実よりも私たちの心を揺さぶる。ギガス写本はまさにその最たる例だ。
あなたは信じられますか?
あの本が、一晩で完成したという伝説を——。
最後まで読んでいただき有り難うございました。
また次回の記事でお会いしましょう。
コメント